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姉ちゃんこと奏視点の小話としてこちらに掲載していこうかと思います。
興味のある方はどうぞ!
なんでこんな事になったのか!
なんという事なの!?
あり得ない!!
私の目の前には野放しの猛獣よろしくじりじりと私に迫りくる野獣、アレクセイ。
私は自宅の廊下の壁にじりじりと追い詰められている。
ちょっと、ジョエルはどこ行った!?
てゆーか、あの双子!!!
「……奏」
あちらの世界では発音しづらいらしい私の名前。
アレクセイは正確な発音で私を呼んだ。
その事に驚いている間に、壁に追い詰められた。
「ちょ、ちょっと、殿下!」
「なぜ俺の名を呼ばない?」
両手を私の首筋に近い位置に置き、壁と体を使って閉じ込める。
覆いかぶさるようにして私に向かうアレクセイは、ひどく不愉快そうな表情で私に言った。
「俺の名を呼べ」
「いやよ」
あちらでは呼んでいたのに。
その呟きは、直接耳に吹き込まれた。
背中がゾワリとして、泣きそうになる。
「奏」
左手を私の頬に添えて、ゆっくりと抱き寄せる。
唇が、耳朶を甘く噛んで、そのまま首筋へと流れて。
「ちょ、や」
「奏……」
ちょっと!!
やだってば!!
「……っ、これ以上、追い詰めないで……」
冷静に言ったつもりが、声が震えた。
首筋を甘くたどっていた唇が離れて、鼻が触れ合うような距離で視線が絡む。
「……すまぬ」
瞬いた拍子にこぼれた涙を大きな手がぬぐって。
その手が私の唇をなぞり、アレクセイが顔を――――
「っ嫌だってば!!!」
「そこまでです、アリョーシャ様」
私が渾身の力でアレクセイを引き離そうと腕を押したのと、バタンッ!! と激しくリビングの扉のあく音がしてアレクセイが「うぉ!?」と変な声をあげつつ引き離されたのは同時だった。
「……ジョエル」
「アリョーシャ様。カナデ様を口説かれるのは結構な事ですが、泣かせてしまうまで追い詰めるのはやりすぎですよ」
息を切らせて、こめかみに汗を滴らせたジョエルがアレクセイを羽交い絞めにしている。
「……わかってる」
ぶすりと口をとがらせてアレクセイが呟いた。……先ほどまでとは打って変わって、一気に子供っぽくなったその様子に、知らずに安堵のため息が漏れる。
ジョエルはそんな私の様子に微苦笑した。
「……失敗した」
開きっぱなしだったリビングの扉からヴィラが顔を出す。
「……あんた、静貴について大学行ったんじゃないの?」
「……帰ってきた」
「ふうん……」
腑に落ちなかったけれど、とりあえず貞操の危機っぽいものを脱出できたという事で、深く追求はしなかった。
だから、ヴィラが私とアレクセイをくっつけようとして、ジョエルが私を助けようとするのを妨害していたとは知らなかった。
あの双子、絶対にぶちのめす!!!
Fin
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