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の小話を載せていたのですが、タイトルが変わった事と、登場人物の名前も変更しているので一度削除しました。
諸々を修正したのをここで再アップ!
します。みなさん良かったら!!
異世界人四人がやってきてから、日本で迎える最初の朝の話
「痛っ!?」
静貴はベッドから落とされた衝撃と痛みで目を覚ました。
それもそのはず。何せ一人用の静貴のベッドには、静貴以外に殿下が眠っていたから。
男と二人でベッドで眠るのはものすごい微妙だ。
床を共にする。すごくいかがわしく感じるのはなんでか。
同性愛者を否定はしないし、別に嫌悪も抱かないが、自分の恋愛対象は女性だ。できれば隣は女性がよかった。
ベッドの下には布団で眠るジョエル。つまり、静貴は殿下に落とされて、落ちた先はジョエルの上。
「……おはようございます。静貴さん」
「……すみません。ジョエルさん」
お互いに異常に近い距離であいさつを交わした。顔は数センチも離れていない。……なんども言うが、恋愛対象は以下略。
殿下はいぐうぐうと眠っている。
「すみません。貴方の私室に二人も増えることになってしまって」
ジョエルは起き上がりながら、自身の上から移動した静貴へと謝罪した。殿下の分も。
「……まぁ、他にどうしようもないですし……」
そもそも、このような部屋割にはわけがある。
昨日の公開説教の後、結局どうあがいても彼らのお世話をしなければならない現実から逃げられないと悟った奏。まずしなければならないのは夕飯の準備と、各自の終身場所の確保である。
来客用の布団は三枚しかない。ついでに言えば、個室は二つ。ひとつは奏、もうひとつは静貴が私室として使っている。そして双子はのたまった。
「パラフィアへ帰るための研究が必要なんです」
「アリョーシャ様の妨害は確実に避けたいし、魔術を使用するからできれば二人だけの部屋がほしい」
居候のくせに! と思わないでもなかった。が、結局奏は一階の普段は使われていない和室を二人に提供した。
日本へ帰るための研究を妨害された事で被った迷惑は計り知れない事を身をもって体験していたから。
だが、まだ問題は残っている。
残念ながらあと二人。
殿下は奏の部屋を所望し。
殿下以外のすべての人間がそれを否定。奏なんかは今にも包丁を持ち出してきそうだった。
普通に考えて、ここは男女で部屋を分けるべき。というわけで、一人部屋が一気に三人部屋となったわけだ。
で、ここでまた問題が発生した。
そう、寝る場所である。
来客用の布団は三組。そのうちの二組は双子へ行った。男三人に与えられたのは、奏の使っていたベッドと来客用布団一組。
「アレクセイ様がベッドをお使いください。私は下で」
「よし、じゃあ、おい、カナタ。お前も下で寝ろ」
「いやいやいやいや! おかしいから。言っとくけど、この部屋の主は俺だからね!?」
男二人のフリーダムな発言に反論し(さすがにこの世界でまでパラフィアの権威を振りかざされても困る)、下手したら殴り合いのケンカにすら発展しそうな会議の結果。
なぜか殿下とベッドを供にするはめに。とんだ災難である。
「まったく、気が利かない男だな」
いつの間にか目を覚ましていたらしい殿下が、ベッドの上でふんぞり返っている。その様子はどこか相手を苛立たせる。
「俺がこの貧相なベッドで寝てやることに決まった時、なぜお前はそれを喜ばないんだ? 一国の王の弟が、こんな粗末なベッドで眠ってやるというのに!! なぜ喜んで廊下で寝かせてください、と言えないんだ? シズキ。俺はそれが不思議でしょうがない!」
不思議なのはお前の頭の中だよ。お前一回病院行けば?
何なんだ。このわけの分からない生物は。
若干へたれていても、それでも男。流石に静貴の堪忍袋の緒が切れた。大体、ここの部屋の主は俺で、しかも朝っぱらからお前にベッドから落とされてんだよ!
「おい、アリョーシャ様」
殿下のお嫌いあそばせる愛称と、嫌味のように様をつけて呼んでやった。
殿下の眉がピクリと動き、同時に口も引きつった。
「……なんだと?」
「お前、いい加減にしろよ?」
この十秒後。壮大な争いが繰り広げられることとなる。たかが寝る場所の問題で。
ジョエルは早々にリビングへ避難した。もちろん、仲裁する気はまったく無かった。
そして、二人は失念していた。
たとえベッドより低い位置だったとしても、一番快適な睡眠を取れたのはジョエルだという事実に。(まぁ、朝はちょっと衝撃的な目覚めだったが)
「ふふ、私は意外と世渡り上手だったんですね」
奏のお手製朝ごはんを食べながら、くすくす笑う。
奏がものすごい気色悪いものを見た、と言わんばかりに体を震わせ、キッチンへと逃げ込んだ。
FIN