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東雲よはんそんの日記兼投稿サイトで連載中の小説の裏話などなどのブログ
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絶対に帰らない!の小話ではないですが……
よろしければ。






王弟の独白



 王位継承権を持つ、王の弟。
 それが俺の立場だ。
 国王は実の兄。
 民衆からは賢王と呼ばれている。
 だが、ひとつだけ問題がある。


『王よ、貴方は血に魅せられている』

 誰が言ったのか、もう忘れた。
 けれど、この言葉は俺の中に深く残った。
 そう。
 兄は血に魅せられている。
 戦場を好むのだ。
 自分から戦いを仕掛ける事はしない。
 けれど、ひとたび戦いが始まれば喜んで参加していく。
 守られる事を嫌い、最前線を求め。
 守ろうとする周囲を置き去りにして。
 一人で走っていく。

『アレクセイ様、どうか、守らせてください』

 そういったのはジョエルだ。
 戦場だった。
 誰しもが敵の命を狙い、自身へ向けられた刃をはじく。
 己の命を守る事が出来ず、沢山の騎士たちが散る中で。
 守らせてください。
 あの男はそう言った。
 王は独身だ。
 子孫はいない。
 次の王位継承権を持つのは俺だけ。
 王は守らせない。
 ならば。
 血筋をつなげるために、俺は守られなければならない。

『私たちは貴方の盾です。盾に情けは不要なのです』

 俺の代わりに散ってゆく騎士達は、皆そろってそういう。
 段々と感覚はマヒしていく。
 俺を守り死んだ騎士に何度となく心を痛めてきた。
 その感覚を俺は失くしていく。
 俺の一番近くにいる存在はジョエルとウィル、ヴィラ。
 俺が一番心を許す存在。
 けれど。
 彼らが俺を守って死んでも、俺はきっとそれを冷静に受け止める。
 冷めた目をして、その骸を見つめるのだろう。
 死んだ事には悲しみがある。
 俺を守り、俺の代わりに死んだ。
 その事実に罪悪感を抱かないだろう。


 だが、出会ってしまった。
 彼女に、出会ってしまったんだ。

『奏』

 彼女の名を呼ぶ。
 正確な発音をした俺を彼女は驚いたように見て、そして笑った。

『アレクセイ』

 俺の名を呼ぶ声。
 俺を見つめる瞳。
 俺に向ける、その笑顔。
 守りたい。
 守りたいと、強く思う。
 守られる事が当り前で、誰かを守った事が無く。
 己の剣は倒すために存在していた。
 それを初めて。
 誰かを守るために使いたいと思った。



『アレクセイ』

 俺の名を呼ぶ声。
 俺を見つめる瞳。
 俺に向ける笑顔。
 俺に預けられた、その体。
 その心。
 全てを守りたいと。
 そう思った。


『奏』

 俺はきっと、
 お前を守るためだけに存在している。
 


Fin

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★ プロフィール
HN:
東雲よはんそん
性別:
非公開
職業:
社会人
趣味:
読書と買い物と音楽&映画鑑賞
自己紹介:
小説家になろう様内で東雲よはんそん名義(+別名義)自作小説を公開しています。

基本的に小心者です 笑
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